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健 康 管 理 に つ い て

犬は言葉を話せません。でも、日常生活の中でたっくさんのサインを出しています。大切な大切な犬を守ってあげられるのは飼い主であるあなただけです。日頃のスキンシップや観察で、些細なサインも見逃さないようにしてあげてください。そしてご家庭に1冊、是非犬の病気や症状、行われている治療法や予防措置などについて書かれた本を置かれることをおすすめします。

(オススメ!/学研発行 矢沢サイエンスオフィス編 もっともくわしいイヌの病気百科)
また、 信頼できる獣医さん選びも飼い主としての大切な責任のひとつです。インフォームドコンセントのしっかりした獣医師のもとで治療や投与される薬の目的や方法、予想される効果や起こりうる可能性のある副作用などしっかり聞きましょう。また、どんなに信頼している獣医師だって人間です。

人間のお医者さんのように診療科目がわかれていませんが、先生によって得意とする動物の種類もあれば不得意な動物、科目があるのではないでしょうか。絶対に誤診がないとは言い切れませんし治療方法や最善と思う方法は獣医師によってずいぶん違うものです。

かかりつけの獣医師の診断や治療方針に納得のいかないことや疑問があれば、納得がいくまで質問し、また必要なときは他の獣医師にも意見を求め、いくつもの選択肢があった場合は最終的には飼い主であるわたしたちが愛犬にとって最善最良と思われる方法を選択したいものです。

獣医選びは犬の状態が健康なときに、愛犬の健康診断・検査などを通じて先生の対応(こちらの質問に丁寧に答えてくださる・犬を丁寧に愛情深く診てくださる・飼い主の話に注意深く耳を傾けてくださる・病気やお薬の説明などをきちんとしてくれるなど)、お人柄、犬や飼い主との相性などから判断すると良いと思います。


それから、食事の選択についてですが、「犬専門家」によるさまざまな意見・獣医師の薦めるフードなど、ネット上だけでも犬の食事に関する記事は山ほどあります。愛犬への食事として選ぶどんな食べものにも、それがどれだけ「自然餌」または「合成餌」であろうと有益性と危険性の両方の可能性があります。犬に必要な栄養は常識的に判断されるべきであり、信仰心が介入されるべきではありません
 
純血種には様々な遺伝性疾患があるということはご存知の方も多いと思います。繁殖のページにも記載してますが、純血種の繁殖はそれらの遺伝性疾患を排除するため、慎重かつ計画的に選択繁殖を行なっていかなくてはいけません。遺伝性疾患は軽度のものは見た目や、獣医師によって行われたとしても一般的な診察だけではわからないことが多いものです。成犬になってから発症する場合もあります。ここではチワワに多く見られる遺伝性疾患の一部や日頃のケア、老犬になってからの暮らしなどについて触れたいと思います。
 

【チワワに多く見られる遺伝性疾患】

 

【日頃のケア】 作成中

 子犬の健康と栄養管理
成犬の健康と栄養管理
老犬の健康と栄養管理
伝染病とワクチン
寄生虫の予防と駆除
皮膚と耳の病気
眼の病気
歯の管理
嘔吐と下痢
ガン
緊急を要する事故
【老犬との暮らし】 作成中

老齢期に多い病気
老齢性の行動変化
老犬の食事
ちょっとした工夫
 
先天性水頭症  
1)定義・概念 原因はよくわかっていないが子宮内での感染、毒素や栄養障害が考えられている。クモ膜繊毛における脳脊髄液(CSF)吸収不全によって引き起こされる。一方ある例では中脳水道閉塞によるCSF還流障害が原因している。片側性の場合はモンロー孔の閉塞が原因である。トイ犬種と短頭種に多く起こる。
2)診断基準 1:好発性のある犬種
  2:臨床兆候と神経学的検査所見
  3:ドーム状の頭部
  4:泉門の開口は診断根拠にはならない。開口している場合にはこの部位からのエコー検査により側脳質拡張や大脳の発達状況が診断できる場合がある。
  5:両側性外斜視、痙攣発作、盲目、痴呆などが神経兆候。これらの兆候は比較的徐々に生ずるが、突然悪化する場合もある。
  6:画像診断。頭部X線所見として薄い頭蓋骨、頭蓋骨における脳溝の欠如。エコー検査による側脳室の拡張、CT/MRIによる側脳室の拡張所見。
3)治療方針 ■原因療法■
  1:プレドニゾン(0.5mg/Kg PO隔日投与)の長期間投与
  2:若齢の成長期にある動物には、間欠的投与に限定する
  3:外科的ドレナージとして脳室静脈シャントの永久的設置術が必要となる場合がある
4)診療の要点 問診状の留意点:ビタミンA欠乏症はクモ膜顆粒によるCFS吸収を変化させ、水頭症を起こす場合がある
  臨床検査の問題点:水頭症の犬は軽度の低血糖を持っていることが多い
  治療上の注意:後天性水頭症はしばしば急速に進行することがあり頭蓋内圧亢進により意識障害を起こすので、意識障害を持っている症例では常にこの疾患も考慮する必要がある。後天性水頭症の予後は一般的に悪い。
参考文献 ・Textbook of Veterinary Internal Medicine4th ed.,Stephen J Edward C. Feldman,eds.,p.616,Saunders,1995
・Saunders Manual of Small Animal Practice,S.J.Birchard and R.G.Sherding,eds.,pp.1135-1136,Saunders,1994
口蓋裂  
1)定義・概念 口蓋裂は硬口蓋〜軟口蓋が正中で癒合していない状態。口蓋骨も正中で左右に分離していることが多い。切歯骨と硬口蓋が分離していることもある。
  [原因]
  1:先天的(発生異常)
  口蓋裂は発生約3週目に一次口蓋(切歯骨に当たる)と左右の口蓋突起の癒合不全により発生する。この癒合不全は短頭種に後発すると言われている。
  2:後天的
  交通事故・その他の外傷、電気コードの咬傷(火傷)、腫瘍の切除などによって口唇や口蓋に欠損が生ずることがある。歯周疾患で上顎歯の口蓋側に激しい骨吸収が起こると、口蓋骨及び上顎骨に欠損が生じ、口腔と鼻腔や副鼻腔を隔てる壁が一部欠損することがある。
2)診断基準 先天性口蓋裂の場合
  ミルクが吸引できず口腔内に入っても鼻腔からミルクが排出されたり誤嚥されたりすることがある。症状は口蓋の破裂・欠損の程度により、軽度ならばクシャミ・咳・鼻汁(特に飲食時)、重度なら気管支炎・肺炎・摂食・嚥下困難・栄養不良など多くの合併症が発生する。
3)治療方針 ■処置の実際■
  先天性口蓋裂の症例では、3ヶ月齢を超えてから胸部X線検査で肺疾患が認められなければ外科手術を決める。軽度のものであれば処置の必要はないが、症状が認められれば外科処置を指示する。処置には出血を伴うので、気道を確保する目的で必ず気管内挿管する。
参考文献 ・小動物の歯科学 C.E. Harvey and P.P.Emily著,奥田綾子訳,LLLセミナー,1995.
・The Embrology of Domestic Animals Developmental Mechanism and Malformations,D.M.Noden and A. deLahunta,pp.156-195,Williams&Wilkins,1985
・S.M.Marretta:Oropharynx,in Saunders Manual of Small Animal Practice,S.J.birchard&R.G.Sherding,eds.,pp.607-629,Saunders,1994
気管虚脱  
1)定義・概念 気管が緊張性を失った状態、あるいは気管の背側膜性壁が伸長・弛緩した状態で多くの場合背腹方向の扁平化を認める病体をいう。特に中年齢層から老年齢層の肥満状態にあるトイ種やミニチュア種に多い。原因はまだ明らかにされていないが遺伝的素因や栄養的素因(肉100%食など)神経学的素因などが示唆されている。また、慢性気管支炎などの気道疾患が原因して硝子気管軟骨や気管筋結合織が犯されその結果気管が脆弱して扁平化を呈する場合もある。症状は喘鳴を伴う努力性呼吸と慢性の乾性咳嗽が主徴である。特に激しい運動や興奮、機械的な気管の圧迫の際や採食、飲水時などに咳嗽が発現し著しい場合にはチアノーゼを伴う呼吸困難を呈することもある。通常虚脱部位が頚部気管にある場合には吸気性の呼吸困難を認め、胸部気管の場合には呼気性の呼吸困難を呈する。
2)診断基準 1:稟告、病歴/咳嗽発作前の状況、咳嗽の時期・期間、犬種・肥満度などから推察する。
  2:臨床症状/喘鳴、努力性呼吸、慢性乾性咳嗽チアノーゼなどが観察される。
  3:一般身体検査
  1)触診:頚部気管の場合には触診により虚脱部位が確認される。
  2)聴診:第U音の増強、肺胞音の増強を確認する。胸腔外気管の虚脱では呼気相の延長と努力性が観察される。(他の慢性心疾患との鑑別が必要である。)
  4:X線検査
  虚脱像・狭窄像が観察される。
  1)2方向、吸気時・呼気時の撮影が必要となる。
  2)心臓・肺の併発疾患の確認と鑑別が必要である。
  3)透視による動的X線像から虚脱状態を知ることも重要である。
  5:気管鏡による検査
  虚脱部位の確認(ただし全身麻酔が必要であり、小型犬が多いため危険性がある)
3)治療方針 おおむね内科的な治療でコントロールが可能となる。外科的治療は賛否両論もあるが一般には最後の手段として検討する必要がある。
  1:内科的保存療法
  1)運動・興奮を避け安静を守ることが重要である。また、暑さにも気を配る。肥満の場合には体重の減量をはかる。
  2)薬物療法 [初期]抗炎症剤・鎮静剤・鎮咳剤 [維持]気管支拡張剤(ただし心疾患併発には禁忌)・鎮咳剤 [うっ血性心不全が併発する場合]強心剤・利尿剤 [慢性気管支炎が併発する場合]抗生物質
  2:外科的療法
  全気管輪補強術、背側膜性壁ひだ形成術などがある。近年ではポリプロピレンのらせん輪を使った補強術で良好な結果が報告されている。
4)診療の要点 ■問診の際の留意点■
  慢性乾性咳嗽の有無・咳嗽の時間帯(日中が多い)・咳嗽性呼吸困難発作前の状況や行動を詳しく伝える。
  ■身体所見の問題点■
  著しい喘鳴を伴う呼吸困難での緊急時に来院することが多く、聴診が難しい場合がある。ある程度犬が落ち着いてから詳細に触診や聴診、視診をする必要がある。また一般身体検査の際、体位の変化に伴いチアノーゼなど病状の悪化を示すことがあるので注意が必要となる。
  ■臨床検査の問題点■
  気管支鏡による視診や透視による動的X線像が確定診断につながるが、麻酔や保体などが問題となる。
  ■治療上の注意■
  1:この疾患は安静と咳嗽を図ることによりある程度コントロールすることは出来るが、完治する疾患ではないこと、生涯治療が必要であることを理解する。またウィルス性気道感染やうっ血性心不全など続発症や合併症に対する監視も必要となる。
  2:外科的治療は内腔が50%〜100%減少に適応されるが、術者の熟練が要求される。
5)その他 この疾患に伴ってかなりの割合で肝臓の腫大が認められることが報告されている。
膝蓋骨脱臼  
1)定義・概念 膝蓋骨脱臼は臨床的に多数、遭遇する疾患である。一般に内方脱臼は小型犬に多く、外方脱臼は大型犬に見られる。いずれの場合も、先天性あるいはなんらかの障害によって発生する。膝蓋骨脱臼の程度について、Putmanによって分類が行われており、診断や外科的治療法を決定する場合にこの分類法が役立つ。
Putmanに基づく分類  
グレードI 膝関節は殆ど正常であるが、関節を伸展して指で押すことによって簡単に脱臼が起こり、緩めると元に戻る。
グレードII 膝関節を屈曲した場合に脱臼が起こり、指で押すか関節を伸ばさないと元の位置に戻らない。
グレードIII 膝蓋骨が脱臼したままの状態が多く、患肢を伸展すると時折元に戻ることがある。
グレードIV 膝蓋骨は脱臼したままで、外科的処置を施さなければ整復できない状態。
A診断基準 臨床症状と身体検査を元に診断を行う。X線検査で脱臼を証明することは可能であるが、撮影時に整復されることもあり、グレードを判定するためにも触診による診断が良い。しかし、大腿骨や脛骨の構造学的異常や滑車溝の深さを診断するためには、X線検査が必要となる。
B治療方針 グレードによって治療方針が立てられるが、解剖学的な異常を出来るだけ代償することを目的として、膝蓋骨が滑車内での安定性が得られるまでいくつかの手術法を併用することが必要となる。
グレードI 外側筋膜の重縫合あるいは外側腓腹頭種子骨と膝蓋骨の固定
グレードII 外側筋膜の重縫合あるいは頚骨粗面の転植術、これらの併用
グレードIII グレードUにおけるすべての手技や滑車溝の造溝術。またこれらの併用。
グレードIV グレードVにおけるすべての手技。大腿四頭筋の解除。またこれらの併用。
  これらの方法でも不安定な場合は、大腿骨あるいは脛骨の骨切り術を実施して解剖学的構造を修正するか関節固定術を考慮する。上記の手技はグレードの状態に応じて選択される一般的な術式であり、いずれの場合も関節包を切開する前に脛骨粗面と膝蓋骨が一直線上にあるかどうかを調べ、次に関節包を切開したあと、滑車溝の深さを評価することが必要である。そしてその結果で、各術式の必要性を検討することが大切である。新生子の場合は脱臼を証明することが困難であるが、歩行をはじめた頃より後肢の運動機能異常が見られるときや、膝蓋骨脱臼の遺伝的素因を持つような犬では膝関節の運動を1回に100〜200回、1日数回行うことによってその後の習慣性脱臼を予防することが出来るかもしれない。
C診療の要点 跛行が発生したときの状況や以前の跛行経験や歩様異常の有無について十分伝える。
  ■治療上の注意■
  通常術後の外固定は必要としないが、2〜3週間は運動制限することが望ましい。特に滑車溝造溝術を実施したものでは厳しく運動制限することが必要。
  小型犬では術後、長期間経ても患肢を負重しない場合がある。もし術後1ヶ月経っても負重しようとしない場合は積極的なリハビリテーション(水泳・屈伸運動など)を行うことが必要である。
参考文献 治療法については以下の文献が参考になると思われる。
  ・Textbook of Small Animal Surgery,2nd ed.,Douglas Slatter,ed.,pp1854-1861,Saunders,1993.
・小動物外科マニュアル Larry Lippincott著,一木彦三監訳,pp87-93,日本小動物重医師会,1990
・小動物の整形外科 完全図解 Wade O Brinkerほか著,加藤元監訳,pp.327-345,文英堂,1988.
乾性角膜炎
 
1)定義・概念 涙液欠乏のため起こる。涙液は三層からなっており、水様性涙液の欠乏が原因である。水様性涙液が減少するため代償的に油性涙液が増加し、眼脂が多くなる。
  ■病因■
  1:免疫介在性
  2:神経性麻痺 外傷による二次性
  3:犬ジステンパー感染
  4:外科的 瞬膜線の切除に関連してみられる
  5:薬物性 サルファ剤・副交感神経作用遮断剤・フェナゾピリジン
  6:涙腺の機能低下
  7:結膜の瘢痕化による分泌管の閉塞
2)診断基準 繰り返し角膜炎になるものや持続的な角結膜炎で、治療により一時的に改善されるものは涙液が減少していることが多い。
  ■臨床症状■
  1:眼瞼痙攣 2:粘性膿性分泌物 3:角膜炎 4:角膜光沢の消失 5:角膜血管新生および色素沈着 6:鼻孔の乾燥 7:慢性乾性症
3)治療方針 原因治療が第一である。しかしながら原因が不明の場合には角膜保護と涙液分泌機能の促進を図る。
参考文献 ・Lavignette AM : Keratoconjunctivitis Sicca in a Dog Treated by Transposition of the Parotid Salivary Duct, in JAVMA 148:778,1966.
・Jensen HE :Keratitis Sicca and Parotid Duct Transposition, in The Compendium on Continuing Education 1:721,V.L.S.,1979.
・Whitley RD, McLaughlin SA,Gilger BC,Lindley DM :The Treatments for Karatoconjunctivis Sicca,Veterinary Medicine : 1076,1991.11
・Kaswan RL, Salisbury MA : A New Perspective on Canine Keratoconjunctivitis Sicca, in The Veterinary Clinics of North America vol.20 no.3,p.583,Saunders,1990
肺動脈狭窄
 
1)定義・概念 肺動脈の根元が先天的に狭いために、心臓の肥大や肺の血圧の低下などが起こり、その結果呼吸困難などの、心臓病に典型的なさまざまな症状があらわれる。先天性心疾患の中では動脈管開存症についで発生率が高い。
2)診断基準 狭窄の程度により臨床症状は異なるため一般身体検査や必要な理化学検査を実施し重症度を判定する。軽度は無症状、中程度〜重症例では発育不全や運動不耐の発現。チアノーゼが見られる場合は、心房中隔欠損などの合併症を考える。
  問診のほか、一般身体検査・心電図・胸部X線写真・心エコー図・心カテーテル法・ドップラー検査法
3)治療方針 1:肺動脈と右心室の収縮期圧較差の測定が最も有効な治療指針となる。
  2:中度以上の症例については外科的治療が必要(弁切開術、流出路のパッチ・グラフト法、経皮的バルーン弁切開術など)
  3:内科治療としては心不全兆候が見られたらうっ血性心不全の治療を実施。
参考文献 ・小動物の心臓病学 John D.Bonagura 著 金本勇訳,LLLセミナー,1991
・ Small Animal Cardiopulmonary Medecine, D.G Allen and S.A Kruch,Dekker,1988
肩関節脱臼  
1)定義・概念 肩関節脱臼は臨床的に比較的まれな疾患である。先天性あるいは外傷性脱臼がみられるが、一般的には後者が最も多い。肩関節では関節包がよく発達しており内側及び外側関節上腕靭帯によって支持されている。そのため関節包やこれらの靭帯が断裂しないかぎり脱臼の起こる可能性は少ない。脱臼する方向によって内方・外方・頭側および尾側脱臼に分けられるが、内方脱臼が最も一般的で、特に小型犬種において起こりやすい。外方脱臼はまれであるが、大型犬種で起こりやすい。頭側および尾側脱臼はかなりまれである。
■原因■
1:先天性 チワワ・ヨークシャテリア・トイプードル・ミニチュアシュナウザー・スピッツ・ポメラニアンなど小型犬種にしばしば起こる。一般には内方脱臼であり、両側性である。
2:外傷性 交通事故・衝突など
2)診断基準 問診上の外傷の有無、臨床症状、身体検査およびX線撮影により診断を行う。外傷の範囲、程度、あるいはそのほかの病変を検査する意味で関節造影を実施することもあるが、読影には熟練を要する。
■臨床症状■
1:患部の疼痛 外傷性のものは疼痛を示すが、先天性のものでは疼痛を示さない場合が多い。
2:前肢のさまざまな度合いの跛行:脱臼の重傷度に依存する。先天性のものでは生後数ヶ月で異常歩行あるいは異常姿勢を呈することが多い。
3)治療方針 脱臼後5〜7日以内に障害が見られる場合、非観血的整復法とスプリントによる固定を試みることも可能であるが、整復後、関節が不安定であったり再発を繰り返すような場合は外科的治療が必要である。先天性脱臼の一部の症例では、疼痛症状もなく十分に歩行できるものもあり、治療を必要としないこともある。通常、脱臼の方向、程度、あるいは周囲組織の損傷度合に応じて以下の治療法が選択される。
1:温存療法 運動及び体重制限
2: 非観血的整復法とスプリントによる固定
3:観血的整復法
4)診療の要点 外傷の有無・その程度及び症状発現時期について詳しく伝え脱臼の原因を問診上で把握してもらう。
参考文献 X線診断・治療及び術後管理については以下の文献が参考になると思われる。
・小動物の整形外科 完全図解 Wade O Brinker ほか著 加藤元監訳 pp399-410 文栄堂,1988.
・小動物の臨床X線診断 Jerry M. Owens著 菅沼常徳,信田卓男訳,pp29-30,学窓社,1984.
・小動物外科医臨床の実際 M.joseph bojrab編,加藤元,藤永徹監訳,pp713-720,興仁舎,1991.
・Saunders Manual of Small Animal Practice, S.J. Birchard and R.G.Sherding,eds.,pp.981-983,Saunders 1994.
僧帽弁異常  
1)定義・概念 僧帽弁閉鎖不全症(以下MI)または僧帽弁逆流(以下MR)とは、僧帽弁複合体(弁尖・腱索・乳頭筋・弁輪・左心房及び左心室)のいずれかひとつ、あるいは複数に障害が起きたため僧帽弁の閉鎖機構が正常に働かず、左室収縮期に血液が左心室から左心房へ逆流が起こる病態である。好発犬種は主に小型犬。キャバリア・チャールズ・スパニエルは特異的に若齢でも発生頻度が高いと報告されている。
2)診断基準 MRでは心室の収縮期に左心室の血液が絶えず左心房に逆流し、左心房内圧の上昇を来たす。心臓が代償期にある間は左心系は容量負荷に耐えるが、病期が進行すると肺うっ血や心拍出量の低下を来たし心不全へと移行する。
MRは進行性病変であることから、病期のステージにより臨床症状が異なってくる。MRをその発症の進行から慢性型と急性型に分類し、さらに慢性型をグレードTからWに分類して説明する。
グレードI 代償期のMRで左心不全兆候は認められない。
問診:ほかの疾患か健康診断時に病院に行った際に発見されることが多い。
聴診:僧帽弁口部でLevine1/6〜3/6の全収縮期性雑音。
心電図:変化ナシ
胸部X線写真:
1.正常か軽度の左心房拡大
2.肺血管陰影は正常
グレードII~III 非代償期のMRで初期〜中期までの病態を呈し臨床症状もさまざま。
問診:発咳・運動不耐性・興奮時の呼吸困難
聴診:僧帽弁口部でLevine3/6〜5/6の全収縮期性雑音。雑音は背側や尾側に放散。左側胸壁でスリルが蝕知されることがある。
心電図:左心室肥大所見。
胸部X線写真:
1.側面像
1)気管の背側への挙上
2)左側主気管支の軽度な挙上
3)心尾側ウエストの直線化や膨隆

2. 背腹像
1)左心室の拡大
2)左心耳の膨隆
3)肺静脈の拡張や肺部門周辺の肺水腫像
グレードIV 末期のMRで左心または両心不全の病態。
問診:安静時の多呼吸・チアノーゼ・重度の運動不耐性・頻回の肺水腫・右心不全兆候の合併(胸水・腹水)
聴診:粗い大きな心雑音・ギャロップ音。肺の湿性ラ音。
心電図:著しい左心室肥大や両心室肥大所見。ST_Tの変化。不整脈(心房細動・上室性または心室性期外収縮)
胸部X線写真:
1.側面像
著しい左心房の拡大(心尾側部にマス様陰影、左右気管支幹の角度の拡大)
2. 背腹像
1)両心拡大の進行
2)胸水貯留に伴う肺葉間裂の明瞭化
3)肺水腫像(エアーブロンコグラムの明瞭化)
急性型 腱索断裂や慢性型MRの破綻の結果みられる急性左心不全の病態。
突然の努力性呼吸・チアノーゼ・喀血・虚脱。
その他の検査方法 ■心エコー図■
1.MRの病態判定にはきわめて有効。
2. 僧帽弁の形態、逸脱の程度、腱索断裂の評価が可能。
3.左室長軸断面における左心房と大動脈直径の比較。
4.左質内径短縮率の算出。
■心カテーテル法■
1.スワンガンツカテーテルによる心拍出量や肺動脈楔入圧の測定による重症度の判定。
2.急性左心不全時の血行動態や薬物の評価に有用。
B治療方針(慢性型)  
グレードI 1.治療や日常生活の制約はなし。
2.可能ならば低ナトリウム食の給与。
3.半年ごとの検査。
グレードII 1.激しい運動・興奮を避ける。
2.低ナトリウム食の給与。
3.エナラプリル:0.25〜0.5mg/Kg s.i.d.継続投与開始。
4.アミノフィリン:5〜10mg/Kg *b.i.d.
5.フロセミド:2mg/Kg *b.i.d.
*咳などの臨床症状の発現をみたら間歇的投与。
グレードIII 1.日常生活の管理や食事をより制約する。
2.エナラプリル:0.5mg/Kg s.i.d.
3.フロセミド:2mg/Kg b.i.d.
4.ジゴキシン:0.22mg/u b.i.d.に分割投与(心筋収縮力の低下や上室性頻拍を伴ったケースにも有効)
5.ヒドララジン:0.5〜1mg/Kg b.i.d.
グレードIV 1.グレードVの治療を中心とし、フロセミドは最高量4mg/Kgまで増量可能。
2.ジゴキシンは中毒となる誘因(低カリウム血症・腎不全)を考慮して投与を調整。
3.フロセミドだけで肺うっ血が低減しない場合は硝酸イソソルビドの内服やニトログリセリンの軟膏、テープの塗布を併用。
治療方針(急性型)

一次治療
1.フロセミド(2〜4mg/Kg)の静注やニトログリセリンの舌下錠の投与(1錠/5kg)
2.30〜60分様子を観察し、肺水腫が改善したらニトログリセリン軟膏またはテープを塗布。
3.肺水腫が改善されない場合は再度フロセミドを投与する。

二次治療
1.ドブタミン5〜10?/kg/minの持続点滴
2.フロセミドは6〜8時間ごとに投与
3.酸素テントまたは経鼻カテーテルによる酸素吸入。低心拍や尿量が得られないケースはドパミン3〜5?/kg/min投与。

身体検査・臨床検査の留意点 1.患犬の殆どが高齢であることから、できるだけ非侵襲的な検査を中心に病期の判定を実施。
2.肺水腫に陥ったケースでは、興奮やレントゲン撮影などによる体位の変換は禁忌。
A型血友病  
1)定義・概念 先天的・遺伝的に血液凝固因子が欠乏しているもの、または凝固因子に分子異常が認められるものをいう。皮膚・粘膜・関節腔・筋肉などに出血。
2)診断基準 先天性血液凝固障害による出血傾向は欠損している凝固因子の種類や程度によって、軽度なものから重度なものまでさまざまで、出血部位やその程度によって臨床症状も異なる。
3)治療の要点 1.問診の際過去に異常出血(特に断尾・断耳・乳歯脱落時)あるいは跛行は認められなかったか伝える。
2.血縁犬に異常出血を認めたことがないか。
3.ワルファリン系殺鼠剤の接種の可能性はなかったかどうか。
4)身体検査所見の問題点 1.軽度の凝固因子の欠乏症では、無症状のことが少なくない。
2.出血性関節炎による跛行は、症状だけでは他の原因で起こる関節炎と区別は難しい。
5)診療上の注意 先天性疾患では、繰り返し凝固因子の補充が必要となることが予想され、全血では赤血球抗原に対する動物の感作の可能性があり、できれば血漿輸液が望ましい。全血の輸血を行う場合には必ず交差試験を行うべきである。また、最近市販された犬の血液型の判定キットの利用は罹患動物と供血犬の血液型を即座に判定可能である。
参考文献 ・モーガン小動物臨床ハンドブック Rhea V.Morgan編 大島慧ほか訳,pp.746-751, 文永堂,1992.
・小動物臨床の実際10 Robert W. Kirk 編, 加藤元監訳,pp476-486,医歯薬出版,1993.
・犬猫の小仔科 Johnny D.Hoskins著, 西田明彦訳,pp.364-380,LLLセミナー,1992.
低血糖症 血液中のブドウ糖濃度が低く、けいれんや昏睡を起こすことがある。